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ゲームの面白さとは何か? 幕間 1-2 [ゲーム分析]

 ボーカロイドの話の続きです。

 『アイドルの才能というのは、ファンから「応援したい」という感情を、どれだけ引き出せるか? にある』

 と、前回のブログに書きました。

 だとすれば、初音ミクほど、アイドルとしての高い才能を持つデジタル・キャラクターは存在しなかったよなぁ、と野安は思っています。



 マルチメディアなどという言葉が流行り始めた頃から、「デジタル・アイドルを作ろう!」という試みは、何度も行われました。最先端のCG技術を注ぎ込んで、より完璧な造詣を目指して、魅力的な女の子キャラを作ろうとしました。

 しかし、どのプロジェクトも成功しませんでした。

 きっと、作られた女の子に、隙がなさ過ぎたんでしょう。隙がないから、みんな「オレが育てた!」という気持ちになれなかった。そういうキャラクターは、やはりアイドルとしては成功しなかったのですね。

 そんな空白地帯に、「ユーザーが労力を費やさなければ、何もできないキャラ」である初音ミク(に代表されるボーカロイド)が、スッポリとおさまったんだと思います。そして、いつまでも「みんなに応援」される存在として、人気を高めているという構図なのではないか、と考察している次第です。



 ちなみに、野安はニコニコ動画に、ボーカロイド関連動画を、それなりに投稿しています。

 知っている方もいるかもしれませんが、「P名」もいただいてます。といっても、マイリストは、たいてい2ケタ。曲によっては3ケタに届くといったレベルの、いわゆる底辺Pでございます。

 こんなヘッポコなレベルであっても、ボーカロイド用の楽曲を一曲を仕上げて、動画として完成させるには、数十時間ほどかかります。ボーカロイドを、きちんと歌わせるのって、すっげぇ労力が必要なんですよ。

 なので、凄腕のPたちが、自我を持っているかのような感情を込めた歌声を作っているのを聴くと、絶句します。いやはや、どれだけの労力を費やしているのか、想像もつきません。のべ百時間以上かかっている作品も、当たり前のように存在すると思いますよ。

 にもかかわらず、そんな労力が注がれた曲が、ネットには山ほど公開されてるんですよね。とんでもない労力が、そこでは注がれているわけです。これほどまでに、ユーザーの膨大な労力に支えられ、輝いているキャラクターというのは、前代未聞でしょう。



 だから、ボーカロイドのムーブメントというのは、ふつうのキャラクター・ビジネスとは、大きく違ってものになっています。

 通常、キャラクタービジネスというのは、いかに「幅広く展開するか」が勝負だったりします。人気が上がるにつれて、コミック化、アニメ化、映画化……と、活躍する場所を広げていく戦略をとる。そうやって人気を高め、ムーブメントを作り出していくわけですね。

 いわば、ユーザーが何もしなくても、どんどんキャラクターに触れる機会を増やし、知名度や人気を高めていく、という方向性のビジネス展開をするわけですね。



 でも、ボーカロイドは、まったく逆の道を歩んでいます。

 他メディアへの展開は、むしろ消極的です。なぜなら、「ユーザーが何もしなくても、プロが作った作品が、どんどん楽しめる」ような環境が整えてはいけないからです。そういうビジネス展開は、むしろムーブメントに水を挿してしまうことになる。

 だって、それは、初音ミクという存在を輝かせるためにはユーザーが労力を注ぐしかない――という環境を崩してしまうこととイコールですからね。



 ボーカロイドを、ダイレクトに「応援」するのは、ユーザーである!

 この一線を守り続けていることが、ボーカロイドのムーブメントがいまなお持続していることの、最大のポイントです。徹頭徹尾、この原点が揺らいでいないことが、このムーブメントの特徴なんですね。

(だからゲーム化されたときにソフト内で使用される曲も、みんなが応援して人気を高めていった市井のボカロ・ユーザーが作った曲になっているわけですね)



 初音ミクをはじめとして、さまざまなボーカロイドが、ネットのあちこちに活躍しています。しかし、これらをキャラクター・ビジネスの一種だと考えないほうがいいでしょう。

 むしろ、アイドル・ビジネスの一種だと考えたほうがいいです。

 みんなに「応援される」ことでムーブメントを起こす。「応援しなくちゃ」という熱意を絶やさないようにして、このムーブメントを持続させる。そのあたりの構造には、アイドル・ビジネスとの類似点が、むしろ多いんですよ。

 なので、野安は、あまり詳しくない人に向けて、ボーカロイドのムーブメントというのはアイドル・ビジネスであり、初音ミクは「デジタル・アイドル」なんですよ、と説明することにしているのです。


(おわり)

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