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ゲームショウ2010を終えて(2)

 ゲームショウの解説の続きです。

 なぜ、今年は中国系・台湾系のメーカーが、こんなに元気だったのか?

 いろいろと理由はあるんだけど、大事な理由のひとつとして、海外から見たとき、日本が魅力的な市場だからですね。日本は世界最強の、そして世界でほぼ唯一の「ケータイのインフラが、とことん完備された国」だからね。

 老若男女がケータイを持ち、通話のみならず、さまざまなオンラインサービスを当たり前のように使用している。いまや、インターネットへのアクセス数で、PCよりもケータイのほうが多いですしね。


 「ケータイの普及率」みたいな数字だけを比べると、他国と変わらないように見えるんだけど、それは数字のマジックに過ぎません。日本以外の国では何世代も前のケータイを使う人がたくさんいるため、最新機種に合わせたオンラインサービスが、とうてい大きな規模で成立しないような状態にある。多くの人が新しい機種を持つ日本というのは、他国の人から見ると「とんでもなく先進的で、素晴らしい市場」だったりします。

(世界各国では、機種の違いが大きすぎたために、いいサービスがビジネスとして展開しにくかったのですね。だからこそiPhoneのようなスマートフォンが、欧米市場での機種の壁を取り払う救世主として、あれほど爆発的に愛されたと考えることもできます。あまり日本で普及しないのは、すでに既存のケータイでも多様なサービスが受けられるからですね)



 日本は、みんなが「インターネットに接続できる」レベルのケータイを持っていて、そこできちんとお金を払う人がたくさんいる。アプリ市場は花盛りで、この市場は右肩上がりです。とりわけ「エンタテインメント」にカテゴライズされる分野の伸びは大きい。

(ついでにいうと、違法アプリがきわめて少なく、健全にビジネスができるというメリットも大きいですね←これは世界的に見て、とてつもなく素晴らしいことだったりする)

 なんだよ! 日本という国は、世界のどこにもないような、すさまじい規模のゲーム市場があるじゃん! ものすごく好況じゃん! なんて羨ましい環境なんだよ! という状態なのね。

 だから、オンライン系のサービスに優位性を持つ中国・台湾のメーカーが、ゲームショウで元気なんですな。日本市場に興味津々なわけです。



 最近は、「日本のゲームはダメだ」とか、「海外に比べて遅れてる」とか、そういうネガティブな声も頻繁に聞こえてきます。

 それは正しくない。

 正しく言うなら、ゲームショウで出展されるPS3やXbox 360などの、「コンシューマの据え置きゲーム機のソフトウェア」が、欧米市場での競争力を、めきめき失っているだけのことです。

 でも、トータルで見ると、日本のゲーム市場は落ち込んでない。オンラインを介して、巨大なお金が流れるようになってるからです。とりわけケータイを介したエンタテインメント市場では、ここに世界最強の市場があったりするわけです。



 つまりね。

 日本のゲームはヤバい。日本向けに作っていたら、どんどん世界に置いていかれていて、衰退しはじめてるぜ! ……と家庭用ゲーム機を主戦場としてきた人たちが危機感とともに叫んでいる一方で。

 日本のゲーム市場は魅力的! こんな美味しい市場は、どんどん参入して稼ぐっきゃねぇよ! 日本向けのゲームを作って売り込むぜ! と心に秘めている海外企業がいる、という状態だったりします。

 そんな、まるで正反対のベクトルを同時に見て取れたところが、今年のゲームショウの、なんとも面白いところだったりします。



 というわけで、ちょっとだけ余談です。

 あえて敵を作ることを覚悟して、書いてしまいましょう。

 これからは、据え置きゲーム機市場なんざ、正直、さほど力を入れなくていいと思うんだよね。ゲームビジネスの視点から見れば、そう結論付けるのが正しいでしょう。だって、その市場は、これから衰退していく市場だもん。

 出版業界が衰退しているのと、同じですよ。

 あと2~3年もすれば、名のある出版社が、そろそろ潰れ始めます。「もはや待ったなし!」な状況はとっくに過ぎていて、カウントダウンを待つだけの状態です。出版ビジネスに、輝かしい未来なんかありません。

 とはいえ、書籍や雑誌が消滅するわけじゃない。やや規模が縮小されて、そこで安定するでしょう。ただ、いまある出版業界の勢いは維持できないし、いくつかの出版社が潰れてしまう(あるいは規模縮小する)ということです。



 据え置きゲーム機のビジネスも、同じ道をたどります。

 まだアジア諸国で市場が広がってるから、数年は大丈夫かな? でもトータルで考えると、いずれ縮小傾向に入ります。「テレビに向かって、1人のプレイヤーが正対して遊ぶ」というスタイルのゲームは、ゆっくりと縮小していきます。理由を書くと長くなるので、ここには書かないけどさ。

 いずれにしても、こっちの船に乗っても、しゃーないよねー。

 というのが、現在のゲームビジネスの風向きでございます。

 いまの、日本のゲームビジネスに元気がないように見えたとしたら、そりは「テレビの前で、1人でゲームを遊ぶ、というスタイルは普遍的に続くものだ」という前提が、じわじわと崩れていることに気付かないまま(あるいは気付かないフリをして)現在まで突っ走ってきて、ふと気付いたら時代にマッチしなくなっていた――という事態が、ついに見えてきてしまったからなんだと思うよ。

(つづく)

( http://twitter.com/noyasuyukio もどうぞ)


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